ダンデライオン~春、キミに恋をする~
それからの帰り道。
何を話して、どうやって泉先生と別れたのか思い出せない。
でも、気付いちゃった。
響の深い深い部分の、密やかな想いに。
ただあたしは。
前を行くその背中について行く事しかできなくて。
「……」
「……」
お参りを終えた人やこれから向かう人達とすれ違う。
元旦の今日は、誰もが親しい人と過ごしていて、笑顔に溢れてて。
スタートをきった新しい年。
期待に胸が膨らんでるんだろう。
いい年になるといいな……。
去年出来なかった事、今年は頑張ってみようかなって。
ねえ、響?
今、なに思うの?
何も言わない。
黙って歩くその背中に、そっと問いかける。
のろまなあたしの歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いてくれるその優しさに、胸が苦しくなる。
響の歩くリズムに合わせて、寝癖みたいにフワフワしてる柔らかそうな栗色の髪が揺れる。
大好きな
大好きなその後姿。
好きだよ、響……。
さっき、あたしに聞いたよね?
お願い事、なに?って……それはね?
それは
“響が笑ってくれますように”
響の笑顔が曇りませんようにって、そうお願いしたの。
だから……あたしの願いを叶えるために言うね?
――……聞いて欲しい。