ダンデライオン~春、キミに恋をする~


「おおーい。今日の日直~」



誰かが呼ぶ声がして顔を上げる。

そこには、さっき出てったはずのショウちゃんが教室の入り口から顔を出していた。


あ。ちょうどいいとこに。
開いていた日誌をパタンと閉じて、それを抱えて席を立った。



「あたしでーす。ショウちゃん」

「……お前ね、センセイと呼びなさい。センセイと」

「で。なんですか?」


スルー?って小さく言って、ショウちゃんはコホンと咳払いをして見せた。







「これを、音楽室に持って行って下さい」



え?

ショウちゃんに手渡されたのは、分厚い楽譜だった。


ズシッて感じで両手に伝わる重み。


音楽室ぅ?やだあ!


「先生、自分で行ってよぉ」


ムッとして見上げると、「まあそうなんだけど」ってポリポリと頭を掻きながら笑う。

も~調子狂う……。


「俺は今すぐに職員室に戻る必要があって」

「つまり。 その職員室と逆方向にある音楽室に行くのが、面倒ってコトですか?」

「……お前正直だな」


恥ずかしそうにジトっと目を細めたショウちゃん。

ったく。
それでも生徒を統べる教師なの?

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