ダンデライオン~春、キミに恋をする~
・シンプルな気持ち
モヤモヤ
モヤモヤ
……なんなの?
泉先生、響の気持ち全然わかってないじゃん!
ちゃんと伝えたの?
「もぉ、なんなんだ、あれは~」
鞄を床に放り投げてベッドにダイブした。
ギシギシとスプリングが軋む。
『よろしくね』ってあたしはダメなんだって。
もう彼にとってはお役御免。
なのに、よろしくされても困るんだよぉ。
「……」
グルッと顔を回して机の上を見た。
そこには、いつぞやの彦星がすました顔をしてこちらを見ていた。
彼の足元には、未開封のクリスマスプレゼント。
蓋をしなきゃいけないのに。
それはあたしをいつも誘惑する。
おいで~おいで~って。
のそのそと起き上がって彦星の前に立つと
そっとそれに触れた。
木の感触がして、ちょっとだけゴワゴワしてる。
それから、淡い黄色の小さな包み紙。
「……」
あの日のことは今でも鮮明に思い出す。
甘い甘い砂糖みたいな響のキスと。
暗闇に溶けこんだ泉先生のロングヘア。
驚いたイツキ先生と
冷めた響の瞳。
そう言えば、あたしがあげるつもりだったクリスマスのプレゼント。
あれ、どうしたんだっけ?
響の家を出るとき、落っことして……。
そのままなのかな……。