ダンデライオン~春、キミに恋をする~

顔を上げると、窓に映った自分と目が合った。

泉先生の、スラッとしたまるで女優さんみたいな顔が一瞬重なる。


一方あたしは、典型的な童顔。
そんなあたしに、沙耶は小動物みたいでキョロっとしてて可愛いって言ってくれる。

先生は……。


もしあたしが、先生みたいに長身でキレイだったら、はじめから好きになってくれた?


……。




「……バカだな、あたし。比べてもしょうがないのに……」




一番はっきりしないのは自分じゃん。
響を避けて、目も合わせられなくて。


こんなに、

こんなに響のことまだ好きなのに……。



傷つくの、怖いの?

響がすこしでも泉先生への想いを見せたら、怖いって思ってる?

ニセモノの彼女でいいって宣言した、あの時のあたしはどこへ行っちゃったのよ……。



「……」



キュッと唇を結んで、目にかかる前髪をスッと横へ流す。

いつのまにこんなに長くなった前髪。

肩にかかるくらいだった髪も、この1年でずいぶん伸びた。



よし。

あたしは鏡の前に座ると、ごみ箱とハサミを用意した。

くしでとかして、前髪にハサミを入れる。



シャキ シャキ



切り落とした前髪が、目の前でパラパラ舞った。




うん、そうだ。

こんなふうに悩んでたって
何も始まんない。

あたし決めた。



好きなものはスキ。

物事はもっとシンプルに。

いろんなもの

全部取っ払ったら

これしか残ってないんだから。



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