ダンデライオン~春、キミに恋をする~
それは、やたらのんびりなしだれ桜。
ほかの桜たちは、いっせいにその花を開らかせたってのに、そいつだけはまだつぼみを大事に抱えていた。
「……あれ?」
桜の根元をジッと見つめる。
ほとんどピンク色だった視界の中に、鮮やかな黄色が目に入った。
「……」
どうせ遅刻なんだ。
ちょっとくらい寄り道して行こう。
あたしは公園の敷地内に足を踏み入れた。
しだれ桜の根元一面に咲くのは、小さな小さなタンポポの群れ。
まるで黄色のじゅうたんを敷き詰めたように咲き乱れていた。
「わぁ、こんなたくさん咲いてるの初めて見たかも」
そう言いつつ、身を屈めて手の伸ばす。
「そだっ。 写メとっとこ」
ポケットに手を突っ込んで、さっきしまった携帯を取り出す。
まだ新しい携帯のディスプレイを開くと、タンポポを携帯の画面から眺めた。
んー……これじゃ、普通のたんぽぽだ。
あたしが撮りたいのは、一面黄色のタンポポじゅうたんなのに。
ディスプレイを睨みながら、ポジションを探して後ずさりをする。
ダメ……もっと、もっと全体に……。
と、その時だった。
足元に、何かが転がっているのに気付いたのは。
集中してたあたしは、そのなにかにつまづいて一気に体のバランスが崩す。
「……わっ!」