ダンデライオン~春、キミに恋をする~
と、とにかくこの場から逃げるしかない。
これ以上ここにいたら、大野健吾になに言われるかわかんない。
意を決して痺れちゃってる足を床から引きはがしたその時だった。
「うん」
朝のちょっと掠れた声が耳に飛び込んだ。
――え?
一歩踏み出して、そのまま見上げる。
響はそのふわふわの髪をくしゃりと掻き上げて、目を細めた。
きゅーーーんって胸が締め付けられる。
久々の、響の笑顔にこのまま死んじゃいそうだ。
離れようと必死になってたぶん、その反動なのかな。
体が、心が、気持ちが追いつかない。
茫然としてると、ポカンと何かでおでこを小突かれた。
「アタッ」
ハッとしておでこを手で押さえると、おそらくでこピンをした大野健吾が耳元で囁いた。
「んな顔してっと、よけーオカメちゃんに見えるぞ。バーカ」
「なっ!?」
なんなのマジでー!
ムッとしたあたしをみて、ベーッと舌を出した大野健吾。
一言よけいだっつのぉ
と、その時。
聞き覚えのある声が聞こえてきた。