ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「ちょ……大野健吾!」
「……またフルネーム?イイって言ったけど、やっぱソレやだ」
え
振り返った大野健吾はムウって口を尖らせた見せた。
「つかさー。 アンタ呑気にしてっけど。いいの?時間なくない?」
「え? あっ、HR!」
そこでやっと気づく。
いつの間にかあたし達だけになっていたことに。
慌てて走り出したあたしの背中に、呆れたような大野健吾が声が届いた。
「いや、そっちかよ」
階段を駆け上がって、廊下を足早に通り過ぎ、なんとかギリギリで教室に滑り込んだ。
よかった……。
ショウちゃん、まだだ。
ホッと胸をなでおろして、窓際の自分の席に向かう。
乱雑に並んでる机の中を歩きながら、チラリと視線を送る。
見ると、すでに響は席に座っていて、眠そうにあくびをしていた。
そして、涙のたまった目がまたあたしを捕える。
わわっ
ドキーーンって心臓が飛び跳ねて、慌てて顔を背けた。
って、何そらしてんのあたし!
シンプルに。
シンプルになるって決めたのにっ
そう言い聞かせて、ゴクリと唾を飲みこむともう一度顔を上げた。