ダンデライオン~春、キミに恋をする~

もう見えなくなってしまったショウちゃんに向かって、負の念を送っていると不意にすぐそばに人の気配がして我に返る。



「遅刻したら、みんなこうなの?」

「え?」



見上げると、成田くんがすぐ隣であたしの顔を覗き込むように見た。

わわわっ。


「ど、どうかな……。あたし、遅刻はじめてで……」


パチンと目が合って、なんて答えていいのかわかんなくて。
気の利いた言葉が言えないまま、視線を逸らす。


うわーん。

目、逸らしてどうするのよぉ。


こんなんで、大丈夫かな?あたし。






「…………」


さっき、ショウちゃんから手渡された小さなジョウロ。
いくら小さな庭だからって、こんなちっこいジョウロじゃ、間に合わないよ。


ジトーっとジョウロを睨んでから、チラリと成田くんを盗み見た……。

つもりが、成田くんもあたしを見ていて。
すぐに目が合った。


ドキン!



「あ、あ、あの、えっと……掃除……そ、そう、掃除!明日からでいいよね!」

「うん」



しどろもどろになりながら、手にしていたジョウロを掲げる。

まさか成田くんがあたしを見てるなんて思わなくて、変な声を出しちゃったよ。

かっこ悪すぎ……。
空回りな自分に嫌になる。



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