ダンデライオン~春、キミに恋をする~


それは。

響からプレゼント。


開けられなくて、ずっとそのままにしてあったそれは、あの時。

あたしがギュッと握りしめていたせいで、少しだけ歪に姿を変えていた。



……。



窓をそっと開けて、外へ視線を移した。

庭に植えてあるポプラの木も、春を待ちわびて新芽をつけていた。


ふわりと風が吹いて、頬を撫で、少し硬い髪をさらりとすいた。

顔を上げてスンと空気を吸い込むと、その中に確かに青い春の匂いがする。


あたしは手元に視線を落とすと、そっと包みを開けて中を覗き込んだ。



「わあ……かわいー……」




響からのクリスマスプレゼント。



それは。
羊毛で出来た可愛らしい小さなヘアピンだった。
ハンドメイドのような、あたたかさがある。


それは花をモチーフにしていて。


……これって、たんぽぽ?




あたしは、そっと太陽にかざした。

太陽の光をうけて、眩しくて。


そのせいかな?

胸がキュッとなって、なんだか泣きそうになってしまった。

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