ダンデライオン~春、キミに恋をする~


……まるで、響みたいだな……。

あたし、こうして1年響と一緒にいたけど、響の事はわからないまま。

知りたいって、思えば思うほどわからなくて。
掴めそうで、掴めない。


不思議な人……。



そんな事を考えてると、先生は「でもね」って付け加えた。

そして、穏やかに微笑んだイツキ先生は響に似た、茶色がかったその瞳を細めた。


「僕はもうひとつの花言葉が好きなんだ」



もうひとつ?



「もうひとつの花言葉。

それは、“ハードルを越える”」



「越える……?」



おうむがえしにしたあたしに、イツキ先生は楽しそうに言った。



「あと、英名でダンデライオンって言われてるのは、花のギザギザした所が『ライオンの歯』みたいだから。
それにね、幸福を知らせる花、でもあるんだ」


「幸福?」


「……うん。たんぽぽはどんな過酷な状況下でも必ずその花を咲かせる。それに、寒い冬が終わり、春の訪れをいち早く教えてくれる花だからね」



春の……訪れ……。



そっか……。

あたし、やっとわかったよ?

鈍くてごめんね……


視界がジワリとにじんで、瞬きをしたらそれは零れてしまいそうだった。



今すぐ

今すぐ響に会いたい……。


会ってあたし、大声で叫びたい。


あなたが、

響が好きだって!

< 332 / 364 >

この作品をシェア

pagetop