ダンデライオン~春、キミに恋をする~
……まるで、響みたいだな……。
あたし、こうして1年響と一緒にいたけど、響の事はわからないまま。
知りたいって、思えば思うほどわからなくて。
掴めそうで、掴めない。
不思議な人……。
そんな事を考えてると、先生は「でもね」って付け加えた。
そして、穏やかに微笑んだイツキ先生は響に似た、茶色がかったその瞳を細めた。
「僕はもうひとつの花言葉が好きなんだ」
もうひとつ?
「もうひとつの花言葉。
それは、“ハードルを越える”」
「越える……?」
おうむがえしにしたあたしに、イツキ先生は楽しそうに言った。
「あと、英名でダンデライオンって言われてるのは、花のギザギザした所が『ライオンの歯』みたいだから。
それにね、幸福を知らせる花、でもあるんだ」
「幸福?」
「……うん。たんぽぽはどんな過酷な状況下でも必ずその花を咲かせる。それに、寒い冬が終わり、春の訪れをいち早く教えてくれる花だからね」
春の……訪れ……。
そっか……。
あたし、やっとわかったよ?
鈍くてごめんね……
視界がジワリとにじんで、瞬きをしたらそれは零れてしまいそうだった。
今すぐ
今すぐ響に会いたい……。
会ってあたし、大声で叫びたい。
あなたが、
響が好きだって!