ダンデライオン~春、キミに恋をする~
・さよなら、響
イツキ先生は、あたしに響の想いを教えてくれた。
あたしはそれを聞いて、響が自分の気持ちを決めたんだってそう確信した。
響は伝えようとしてくれてたのに、あたし、逃げててごめんね?
でも。
次の言葉で、イツキ先生はあたしを地の底へ引きずり落としたんだ。
「……え?」
先生、今……なんて?
舞い上がって、トリップしてた。
でも、耳に入った先生の声が、ガンって音を立て、頭の中にぶつかった。
聞きかえしたあたしに、先生は眉を下げて言った。
「留学の話、椎菜ちゃんは何か聞いてるのかな?」
待って
なんの事?
りゅーがく……留学?
「響がピアノやってるのは知ってるよね? フランスから推薦の話が来てるんだよ」
フランス……。
知らない。
あたし、何も……知らない。
目の前が、暗くなる。
真っ暗な闇に覆われてしまう。
足が、ズルズル引っ張られてる、耳鳴りがして。
イツキ先生が、見えなくなってしまった。