ダンデライオン~春、キミに恋をする~

ドクンって、胸が軋む。

長いまつ毛。
まるでビー玉みたいな綺麗な瞳。
ぷっくりと熟れた果実のような、唇。

響と似たイツキ先生は、その瞳の中にあたしを移したまま口を開いた。



「――弟といてくれてありがとう」

「………」



それは、家族を愛する、とても。

とっても暖かい言葉。


「おかげでちゃんと話が出きた。
僕の気持ちを伝えることが出来た。 これで今までの溝が全部埋まったとは思えないけど……。それでも、ちゃんと向き合ってくれようとしてるみたいだから」


そう言って先生は、ちょっぴり照れくさそうに笑った。

ほんとに、響を大切に思ってるんだな……。




先生のその言葉が、あたしの真っ黒に染まっていた心に白い絵の具を落とす。


黒が白に戻ろうとしてる。




救われた気がした。


< 335 / 364 >

この作品をシェア

pagetop