ダンデライオン~春、キミに恋をする~


玄関を開けると、まだ肌寒い春の空気があたしを包んだ。

鞄を肩にかけて、うーんと両手を広げる。

穏やかな太陽の日差しを全身に受けて、息を吹きかしてく。
そんな気がした。



その時、ガチャリと玄関が開いた。


「椎菜」


ん?と振り返るとお母さんはまだ化粧もしてない顔で



「行ってらっしゃい」



って、そう言って笑った。

昨日、泣きじゃくってたあたしを気遣ってるんだ。

包み込むような母の腕の中を思い出して、ちょっとだけ気恥ずかしくなる。



お母さんってば……。
いつもならキッチンからしか見送ってくんないのに。


……わかりやすすぎだし。


照れ隠しに「さむ~」って言いながら玄関ポーチを出て階段を下りた。



「行ってきまーす!」



振り向きざまにそう言って、あたしは学校へと駆け出した。



お母さんの、優しい笑顔に見送られながら。







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