ダンデライオン~春、キミに恋をする~
その騒ぎの中、あたしはクルッと教室を見渡した。
……来てない。
ショウちゃんをひやかしているクラスメイトの中に、響の姿を見つけることは出来なかった。
来ない、つもりかな。
もしかしたら、今日で最後かもしれないのに。
フランスに行く準備で忙しいのかもしれないけど、今日くらい……
今日くらい顔出してくれればいいのに……。
みんなショウちゃんの結婚の話に夢中で、響がいない事なんて全然気づいてない。
……響の……バカ……。
それからあたし達は、終業式を行うために体育館に向かった。
これでもかってくらい、たくさんの生徒で埋め尽くされた体育館に、息がつまりそうだった。
校長先生の長い話が、ふわふわと聞こえる。
普段見慣れないスーツ姿のショウちゃんは、腕を後ろで組んで、校長の顔をジッと見つめている。
でも、話は聞いてないと思う……。
瞬き、超ゆっくり……。
はは、眠いんだな……。
それから視線を移して、泉先生を探した。
ずいぶん後ろの方で、初めて泉先生に会った時に来ていたのカーディガンと同じ色のスーツに身を包んでジッと前を見据えていた。
真っ黒な髪が、体育館に吹き込む風で揺れている。
やっぱり泉先生はキレイだ。
先生の周りだけスポットライトを当てたみたいに、明るく見えた。