ダンデライオン~春、キミに恋をする~


はあっはあっ


どこ?

どこにいるの?




すれ違う人にぶつかりそうになりながら、走った。


「こら! 廊下を走るな」


先生に怒られても、あたしは走るのをやめなかった。



食堂

屋上

誰もいない渡り廊下

空き教室

音楽室

もう使われなくなった東校舎……。



思いつく場所は全部見た。

でも、響の姿はどこにも見当たらない……。




箱庭にもいなかった……。



どこなの?

響……。


学校に来てるなら、どうして教室にこなかったの?


あたしがいるから?

会いたくないって、響は思ったのかな……。


何度も往復した階段。
そこを数段上ったところで、とうとうあたしの足は止まってしまった。

苦しくて、上がった息を整えるのも忘れて。
よけいに涙が溢れそうにあった。


その時。

俯いたあたしの足元に、影が落ちた。






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