ダンデライオン~春、キミに恋をする~
・春、君に恋をする
校門を抜けてS坂を急ぐ。
間に合うかな
まだいるかな
もうバスに乗っちゃったかな
急な下り坂に、足がもつれそうになる。
急がなきゃって思えば思うほど、空まわって行く。
もっと、
もっと早く!
「…………」
その時だった。
視界に、眩いばかりのピンク色が飛び込んできたのは。
思わず足を止める。
「……わぁ……」
そこは。
S坂の途中。
あの小さな小さな公園だった。
優しい春の風に遊ばれて
満開のしだれ桜が揺れていた。
ふわり
ふわり
ピンク色の花びらが、あたしの頬をかすめた。
「……もう、咲いてるんだ……」
古いその桜の木の根元は、あの頃よりもっともっと
たくさんの黄色い花で覆われている。
そして
やっと見つけた。
ずっと 探していたあの人を……。