ダンデライオン~春、キミに恋をする~

薄く開けられたその瞳。

ぼんやりと空を眺めて、響はゆっくりと上体を起こした。



あ……寝癖ついてる……。

後ろ髪がピョンピョン跳ねてて、いたるとこに黄色のたんぽぽの花びらをつけた響。

ワシャワシャと髪についてる花びらを散らした響は、頭上に広がる桜の傘を見上げていて。

そんな彼に、次々と舞い散るピンク色の花びら。


静かにそれを眺める響は
まるで花びらたちとお話してるみたい。



あの日。

響に初めて出会った、あの日。


彼に恋に落ちた
あの時に戻ったみたい……。

そんな不思議な感覚になってしまう。



キレイ……。


息をのむ


目の前が滲む

キラキラユラユラ

それが余計に現実感を遠ざける。


「……」


こんなに幻想的なシーンは見た事ないよ……。



あたしの足は魔法にかかったみたいに
その場で止まってしまった。



本当に響は、あたしの知らないものをたくさん見せてくれる。

しばらく空を仰いでいた響の瞳が
ふとあたしを捕えた。



そして

―――微笑んだ。


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