ダンデライオン~春、キミに恋をする~
キラキラした光と風が
あたしを包み込む。
朝の肌寒さがうそのように、暖かで穏やかな春の日差しが降り注ぐ
小さな小さな公園。
しだれ桜の下
一面のたんぽぽの絨毯の上に座り込んだ、あたしと響。
両手で顔を覆ったままのあたし。
少しの沈黙のあと、響はそっと涙で濡れたあたしの頰に触れた。
少しだけひんやりとした、響の手。
胸がドキリと跳ねた。
頬を赤く染めたあたしを見て、目を細めた響の手がゆっくりと指先に絡められる。
「……一応学校行ったんだけど、もう終業式始まってて。
それで、ちょっとメンドーになっちゃって。ここでサボってた」
「……授業サボったことないくせに」
「はは、そう言えばそーだ。 でも今日こんなに天気がいいし、もったいなくなっちゃって」
「なにそれ」
呆れて、でもおかしくて思わず笑ってしまったあたし。
そんなあたしを見て、響が嬉しそうに、愛おしそうに微笑むから、恥ずかしくなってまた俯いた。
「……俺さ」
それから桜の幹にもたれるように空を仰ぐと、吐き出すように言った。
「ずっと逃げてたんだ。
兄貴のことも、森崎先生のことも。
椎菜のことだって、正直面倒だって思ったこともあった。
だけど、いつだって椎菜は変わらなくて
眩しくて。いつのまにか目が離せなくなってた」
「……」
「もちろん、そのせいでたくさん椎菜を傷つけたのもわかってる。
俺の事、信じられなくてもそれも仕方ないし、すぐに元に戻れるなんて、そんな都合いい事も考えてない」
満開の桜の間から零れる太陽の光を目で追っていた響が、今度はまっすぐにあたしを見据えた。
トクントクンって胸が鳴る。
頭の中、何も考えられないのに、響の言葉が桜の花びらのように、あたしの中にストンストンって落ちてくる。
不規則なリズムで、響の柔らかなキャラメル色の髪が揺れて。
顔に落ちた影が、それに合わせて場所を変えている。