ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「椎菜の百面相。 ずっと見てても飽きない」
「……み、見ないで下さい」
「なんだよ、なんで?」
可笑しそうにふわりと笑って首を傾げた響。
性懲りもなくトクンって胸が弾む。
もぉ……天然?それとも計算?
どっちにしても響は手強いよぉ……。
……あ。
その肩に、ひらりと桜の花びらが乗っかった。
それを見ていると、ふいに響の手があたしの髪に伸びてきた。
えっ
思わず目を閉じて身構える。
でも、その手が呆気なく離れたのに気付いて閉じた目をそっと開けた。
「……」
「――桜、ついてた」
親指と人差し指で摘まんだ薄紅色の花びらを、自分の口元へ運んだ響。
口角をキュッと上げたその微笑みに、胸を鷲掴みにされる。
儚くて、あったかくて。
瞬きしたら消えてしまいそうなほどで。
……春みたいだ。
まるであたしがそうされてみたいに、胸がざわざわする。
一瞬だけど、時間の流れが、あたし達のまわりだけゆっくりになったように感じたんだ。