ダンデライオン~春、キミに恋をする~
ふと、空を見上げた。
どこまでも続く、霞みがかった春の空。
穏やかな風に乗って、のんびりと浮かぶ真っ白なわたげ雲。
その雲に隠れんぼする、小さな飛行機。
「どこまで行くのかな……」
そう言って空を見上げる響の髪が
ふわりと持ち上がった。
眩しそうに飛行機を追いかけるその瞳は
空なんかより、もっともっと遠くを見ているようだった。
スウッと空気を吸い込むをどこからともなく甘い香りがした。
響の香り?
それとも……やっぱりこれが春の匂いなのかな……。
陽だまりみたいな
その香りに、喉の奥がキュってなる。