ダンデライオン~春、キミに恋をする~
ジョウロを元の場所に片付けて、ベンチに置いてあった鞄を手にとった。
水やりも終わったし、少し早いけど教室に行こう。
そう決めて、あたしはまず玄関に向かう事にした。
まだ早いせいか、校舎の中は静かで。
それでも、校庭から朝練をするかけ声が、風に乗って聞こえてくる。
その中に、金管楽器の音が混じっていた。
あれ?
吹奏楽部も練習やってるんだ。
音楽室かな?
もしかしたら、泉センセが顧問?
あたしは教室に向かう足を止め、窓から身を乗り出した。
ここからなら音楽室がよく見える。
「……んん?」
音楽室は、ガランとしていた。
ふと顔を上げると、南校舎と西校舎を繋ぐ渡り廊下で30人くらいの生徒がならんでいる。
あそこでやってるんだ……。
最近はもう暖かいからなぁ。
でも、泉先生はいなかったような……。
音楽の先生でも、吹奏楽の顧問をやる事とは、また違うんだ。
再び歩き始めたあたしは、ブレザーのポケットからケータイを取り出した。
さっき沙耶からメールが来てたのを思い出したんだ。
カチカチと鳴らしながら、送信ボタンを押したその時、どこからか話し声が聞こえて顔
を上げた。
見上げた先は、音楽室。
少しだけ開いた教室の扉。
声は、この教室の中からしていた。
泉先生がいるのかも。
そう思って、その隙間から中を覗き込んだ。