ダンデライオン~春、キミに恋をする~
ドクンドクンって心臓がうるさいくらい加速する。
喉の辺りがギュッと痛くて、あたしはやっと足を緩めた。
すっごい喪失感……。
なんだ、これ?
「……はあ、はあ……」
そっか、わかっちゃったんだ、あたし。
成田くんのあの表情。
見た事ない、『特別』な顔してた。
あはは……。
そか、そう言うことか。
好きだって伝える前に……
これって、”失恋”っていうのかな。
まだなにも始まってもいない恋……。
泣いたってなんにもならない。
あたしは涙を流せるほど、頑張ってないから。
「……」
そんな強がりの思いとは裏腹に、今にも落ちてきそうな涙をセーターの袖でグイッと拭うとあたしは顔を上げた。
バレてないよね?
どうか、成田くんには見ちゃったこと、バレてませんよーに。
だって、どうして逃げたかなんて聞かれても、言い訳見つからない。
……って、あちゃー。
あたしってば、また中庭にもどって来ちゃったんだ。
教室に行くつもりだったのに。
無我夢中だったから、そんな事にも気づかなかった。
「あーあ」
ここから見える空は、四角く見える。
ほんと、『箱庭』。
『おはよ』
目を閉じると、今にも成田くんの声が聞こえてきそうだ。
あたしも、重症だな。
なんて、ベンチにストンと腰を落とした時だった。
「おはよ、間宮」