ダンデライオン~春、キミに恋をする~
いきなり目の前に影が落ちた。
え……?
見上げると。
「足、速いし。なんで声かけてくんなかったの」
そこには、ちょっとだけ怒ったような、それでいて困ったような成田響がいた。
な、な……
「なな、なんで成田くん? 幻覚!?」
「幻覚? なにいってんの」
思わずベンチから転げ落ちそうになる。
さらに首をかしげた成田くんは、顔をしかめながらさらにあたしとの距離をつめる。
ドクン!
「ごっごめんなさいっ! あたし、何も知らない!なにも知りませんからッ」
「え、ちょ……間宮?」
両手をガバッと前に突き出して、近づいた成田くんがこれ以上こっちにこれないようにガードする。
「ほんっとに何も見てないから……先生と何話してたかなんて、聞こえなかったし……だから!」
「ちょっと待ってよ。 話が見えない」
「ッ!」
そう言って突き出したままのあたしの手を掴んだ、あたたかい手。
それは突然で。
不意打ちで。
華奢で長くて
綺麗な成田くんの手も骨っぽくて。
男の人だったから驚いた。