ダンデライオン~春、キミに恋をする~
なんとなく話の糸口が見つからず、緑の芝生の中に生えてるタンポポを眺めていた。
「あのさ、間宮」
そんな中、先に口を開いたのは成田くんだった。
低くて、透明なその声に誘われるように顔を上げると。
その先には、ベンチに背中を預けて
遠い空を見上げてる、横顔が目に入る。
その顔は
近くにいるようで
遠いなーって、そう思えてしまう。
そして、彼は空を見上げたまま、独り言のようにつぶやいた。
「……俺と付き合わない?」
……え。
「えええええッ!!?」
思わずベンチから立ち上がった。
え?
あれ?
ちょ……ちょっと待って?
「なんもしない。 だから、俺と付き合ってよ」
「……」
え……。
それはそれは勢い余って立ち上がったあたしを見上げる、真剣な成田響。
空を見上げていた時とは明らかに違う顔。
現実を見て、しっかりとあたしを見据えている綺麗な顔。
その瞳の中には、瞬きを繰り返す、なんともマヌケなあたしが写ってる。
目の前の、転校生は何食わぬ顔をして、あたしの返事を待っている。
その表情は、真剣そのもので。
冗談だと思ったのに。
そんな彼を見たら、もしかしたらほんとに成田くんも、あたしの事が好きかもしれないとさえ思った。
ドックン ドックン ドックン
「あ、あの……あの、成田くん……付き合うって……」
急に恥ずかしくなって、一気に頬が火照りだす。
モゴモゴと言うあたしの言葉をしっかりと理解した成田くんは、投げ出していた体を起こして、あたしと向き合った。
成田くんは、呆気にとられてるあたしをしばらく眺めてから、追いうちをかけるように、もう一度確かめるようにそしてハッキリと言った。