ダンデライオン~春、キミに恋をする~



その日のあたしは、もちろん上の空。

授業なんて手につくわけもなく、ただ机に座って固まっていた。


こんなにも、この席を呪ったことはないだろう……。
てゆか、新学期始まって早々、こんな気持ちになるなんて。


予想外だ。


そして、これからもこの席であり続けると思うと。


あたし絶対…………死ぬ。






「……っとー、シィ! シィってば」



頭の中で声がする。


あー……やっぱりダメかもしれない。

病名はなに?
心臓関係だよね?


なんて、頬杖をついたまま何も見えていない目で、ぼんやりと黒板を眺めていた。



「もーうっ! 椎菜っ、目ぇ覚ませーっ」

「うわっ!」



鼓膜を殴るような声に、一気に現実に引き戻された。

ハッとして顔を上げると、そこには茶色の巻髪を揺らす沙耶が、世にも恐ろしい顔をして立っていた。



「……え? 沙耶?どうしたの……ビックリさせないでよぉ」

「どうしたもこうしたもないでしょ! もうとっくにHR終わってんの!」

「ええ?」



沙耶の言葉に慌てて教室を見渡すと、確かにもうほとんどの生徒は帰ってしまっていて。


掃除当番と、今日の日直くらいしか残っていなかった。




うわーん。
ま、またやっちゃった……。





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