ダンデライオン~春、キミに恋をする~


あたし、ほんとどうかしてる。
それもこれも、全部成田くんが悪いんだ!



溜息をつきながら、すでに主のいない机を睨んだ。



「わかった? もう、どんだけぼんやりしちゃってんのよ。 ゆっこ達は部活があるから先に行ったよ?」


「……そ、そうなんだ」




そんなあたしに、首を傾げながら沙耶はそう言うとなんの躊躇もなく、成田くんの席に腰を下ろした。



「どうしたのよー。 いつにもましてぽやんとして。 なんかあったの?」

「……」



沙耶の大きな瞳は、いつもしっかりとメイクされていて。
あたしを覗き込んだそのまつ毛が、バサバサと動いた。




「成田響?」

「へっ!?」



突然その名前が出て、思わず声がうわずっちゃった。

ぎゃー! 
これじゃ、「ハイ、そうです」って言ってるようなもんじゃん。

あたしのバカーっ!



「やっぱり。 花壇の水やりと言う名の、毎朝の密会。 なんにもないんじゃ、おかしいもんねー」

「み、みみ、密会なんかじゃない! あれはショウちゃんが……!」




身を乗り出して抗議をする。
でも、沙耶の顔はまるで子供のように輝いていて、それはお昼にやってるドラマの中の刑事とダブって見えた。



「ほっほーう。 んで? “密会”じゃない“ただ”の水やりで、何があったのかな?」

「…………」




なんでもお見通し。

沙耶は、自信に満ち溢れた笑みを浮かべている。




昔からそうだ。
沙耶には、ウソはつけない。


まるで、あたしの心の中が読めちゃうんじゃないかってくらい。
あたしより、あたしをわかってる。


あたしは「はぁー」と小さく溜息を零すと、まだ実感のわかない“ぼんやりの訳”を話した。



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