ダンデライオン~春、キミに恋をする~
でも、あたしはある違和感に気がついて首を傾げた。
「……開いてる?」
そこまでゆっくり近づいて、そっと手を伸ばす。
触れた瞬間、鉄特有の冷たさが手のひらに広がった。
そして、グッと力を入れてみて疑問が確信に変わった。
いつもはしっかりと鍵のかけられている、旧校舎の鍵が開いていた。
こんなこと、あるんだ……。
――ゴクリ
意味もなく唾を呑み込むと、その錆びたドアノブをそっとひねった。
ギイイ――……
重たいような、甲高いような、不思議な音を上げて扉が開いた。
まるで、ちょっとした冒険に出たみたい。
イケナイってわかってても、それって余計に好奇心をあおってる。
逆効果だよね……。
だいいち、鍵を閉め忘れていったほうが悪いのよ。
ってそう思う事に決めて、あたしは旧校舎に踏み込んだ。