ダンデライオン~春、キミに恋をする~
ドクンって心臓が鳴いた。
成田くんは、そう言ってゆっくりあたしとの距離を詰めた。
「あ、あの……あ……」
「言いにくい? じゃあ、付き合ってもいいなら俺の名前、呼んでよ」
「……名前?」
……。
この音楽室の中に、まるで粒子の粒が飛んでるみたいに、キラキラ光って見える。
机に浅く腰をかけて、ポケットに両手を入れた成田くんは、上目づかいであたしを見据える。
太陽の日の光に反射して、彼の髪が蜂蜜色に輝いて見える。
ドクン
ドクン
まぶしいよ……。
まぶしずぎて、目がくらむ……。
「……」
口の中、粘っこい。
声、ちゃんと出るかな……。
あたしの答えは決まってる。
成田くんの言ってる「付き合う」って意味が、まだわからないけど。
だけど、彼に運命を感じたんだから。
あたしは、ちゃんと決めた。
「……ひ、びき……」
意を決して、出した声は。
震えていて、細くて。
頼りなくて。
真っ赤になってるあたしは、その場に立ち尽くしたまま。
身動きも出来なくなっていた。
恐る恐る見上げると。
「……」