ダンデライオン~春、キミに恋をする~
小首を傾げて、ふわりと微笑む成田くんの姿。
「あッ、えと……でも、その……なんであたしかなーなんて」
成田くんが嬉しそうに笑うもんだから、また恥ずかしくて。
慌てて視線を逸らしたあたしは、意味もなく前髪をすきながら言葉を並べる。
「あたしなんて、ちっこいし、童顔だし……髪なんか癖っ毛でまとまりないし!
そ、それに……って、やなとこ言えばきりないか。
だからさ、成田くんがどうしてあたしを選んだのかなって……」
黒いピアノをベタベタといじりながら、止まらない言葉たち。
うわーん……
あたしってば、自分で自分の首絞めてどうするつもりなのよ。
なんだか言ってて泣きたくなってきた……。
シュンとうなだれていると、うつむいた視界に影が落ちる。
ハッとして顔を上げると。
いつの間にいたのか、成田くんがそこにいて。
ポケットに入れてた手を、ふいに出した。
「……」
「俺がいいと思ったから……」
…………。
ドクン
ドクン
背中に感じる体温。
熱い……
熱いよ……。
「それだけじゃ、ダメかな」
成田くんは、まるであたしを閉じ込めるみたいに古ぼけたピアノに両手をついて、あたしを追い詰めた。
そして背中越しに覗き込まれて、微笑んだ。
「……うん。わ、わかった」
どうしよう……。
死んじゃいそう……。