ダンデライオン~春、キミに恋をする~
彼は柔らかな髪をワシャワシャと撫でると、そばにおいてあった鞄をヒョイと拾い上げた。
「――俺がこんなとこで寝てたのが悪いんだ。 だからお互い様ってことで」
「……は、はい」
――……ドキン
……笑った。
なんて優しい笑顔を見せるんだろう。
まるで……。
その笑顔は、優しい風、穏やかな陽だまり。
そう……春みたいな人だ。
時間を奪われたみたいに、あたしは彼を見つめてた。
そんなあたしに気づいて、名前も知らない彼は、小首をかしげた。
「行かないの?」
「へ?」
不思議そうなその声にハッとして我に返ると、公園の入り口であたしを待つ彼がいた。
「……」
腰が抜けちゃったみたいに、その場に座りっぱなしのあたし。
彼の言葉に今度はあたしが首をかしげる。
「学校、一緒だよね?もうとっくに始業式始まってるんじゃないの?」
「へ?」
そ、そうだ始業式!
ハッとしてなんとか立ち上がると、転がっていた携帯と鞄を掴んで彼の後を追った。