ダンデライオン~春、キミに恋をする~
・虹色の髪
あれから1ヵ月がたった、ある日。
その日も、雲ひとつない空は穏やかに晴れていて。
緩い風が頬をくすぐった。
あたしは今ひとり、箱庭のベンチでふたり分のお弁当を抱えている。
携帯で時計を確認すると、お昼休みになってもう20分たっていた。
「……遅いな」
そう呟いた時、不意に手元に影が落ちた。
見上げると、
「椎菜」
そう呼ぶようになった響があたしを見下ろしていた。
響はあたしの隣に座ると買ってきたペットボトルと手渡しながら言った。
「腹減った。 遅くなってごめんね?自販機めちゃくちゃ混んでた」
「そうなんだ。 ……ハイ。お弁当」
「サンキュ」
響はふわりと笑顔を零すと手を伸ばした。
その瞬間、一瞬だけど指先が触れ合う。
「……」
それだけのことで、あたしの体はビクリと反応してしまう。
真っ赤になったあたしになんか、全然気づかない響は弁当箱のふたを開けると「いただきまーす」と手を合わせて見せた。
あたし達は今、まるで恋人同士のようにお昼になるとここで待ち合わせをして。
そして、恋人同士のように響はあたしのお弁当を食べた。
「本当に椎菜の弁当はうまいね」
そう言って、ペロリとたいらげた響はそのままベンチにゴロリ。
これも、いつものこと。