ダンデライオン~春、キミに恋をする~
フォークにさしたままだったウインナーを、勢いよく口の中に放り込む。
そんなあたしを見て、体を起こした響は「そう?」と前髪をクシャリといじった。
自分の前髪を触りながら「でもワックスつけないとサラサラ過ぎて結構困るんだよ」ってそう言いながら、あたしの顔を覗き込むように見た。
その仕草に、思わず心臓がドキリと波打つ。
真っ黒な瞳の中に吸い込まれそうな感覚になって、あたしは慌てて顔をそらした。
「で、でも、あたしは直毛だから……響の髪質うらやましい」
空になった弁当箱を鞄にしまいながら言うと、まだ響がこっちを見てる事に気づいて、また頬が火照ってしまう。
その真っ直ぐな瞳に見つめられたら、あたしのすべてを見透かされちゃいそうになる。
響は、出会った時から変わらない。
変わっていくのは――……。
「――、俺は好きだな」
「えっ!?」
驚いて顔を上げる。
何度も瞬きを繰り返すあたしを見て、響はふっと口元を緩めた。
そして、不意にその手があたしの髪に触れる。
――……ドキン ドキン
響の長い指が、あたしの髪を絡めとる。
じっと見つめるその瞳は、あたしから逸らされることはなくて。
ただ、触れた指からどんどん熱が上昇した。
「……まるで絡みつくみたいだ。 椎菜の髪」
「え?」
「うん。 こーゆう髪質、俺は好きだよ」
悪戯っぽく口角をキュッと上げた響。
……髪?
髪質、ですか?
もしかして、もしかしなくても。
響の今の『告白』はあたしにじゃなくて、あたしの髪に対するのだったわけ?
「どうかした?」
「……別に」
嬉しいけど。
……嬉しくない。
変わっていくのは、あたしの
――……この『想い』だ。