ダンデライオン~春、キミに恋をする~

加速していく恋心に、最近あたし自身がついていけてない気がする。

「好き」がひとり歩き。
そんな感じ。


「……」


響は、本当はどう思ってるのかな?
『好き』って言葉……聞いたことない。

ちらりと、響を盗み見る。



――トクン


小さく小さく心が反応する。


響がここにいるだけで。
響を見るだけで。

あたしの五感が敏感に反応するんだ。


ドキン
ドキン


はあ……ダメだ。



ひとりで真っ赤になっていると、響はベンチの背もたれに頭をもたげて空を見上げた。


木漏れ日の下で、サワサワと風に髪を遊ばせて。
響の鼻歌が聞こえる。


~♪~♪~♪~



最近気がついた。

こうして、一緒にいると時々響は歌を口ずさむ。
低くて、ちょっぴりハスキーな声。

心地よくて、あたしも響の見てる空を見上げた。


この箱庭から見える景色は、まるで写真を切り取ったみたいに四角くて。



真っ白な綿菓子雲がのんびりと泳ぐ。
まるで、響の歌声に合わせているかのように。


それは穏やかに、優しく流れていた。




< 63 / 364 >

この作品をシェア

pagetop