ダンデライオン~春、キミに恋をする~
「シィ、次移動だよ~」
教室に戻ったあたしを待ち構えていた沙耶が、手にしていた携帯を振りながら言った。
「あれ、そうだっけ?」
あたしの後ろから顔を出した響が、首を傾げた。
もう、このクラスであたしと響が付き合ってるのは認知されてる。
そりゃ、毎日毎日お昼になれば待ち合わせをしてるんだからバレちゃってもしょうがないんだけど。
始めはクラスの女の子に取り囲まれたっけ。
その時はまだお昼は一緒じゃなかったけど、毎朝の花壇の水やりとかで「もしかして」程度の噂だった。
――――――――……
――――――……
『間宮さん! 一体どんな手ぇ使ったの!?』
『ヌケガケなんてずるいよーっ』
『シィにそんなテクがあったなんて、マジで信じらんないですけど!』
『ウソでしょ!』
『そうそう、嘘って言いなよぉ』
なーんて、ね。
誰もいない裏庭で。
まるで集団尋問。
恐くて、なんて言っていいのかわかんなくてあの時、あたしはただ何も言えずにいたんだ。
『そうだ!水やり変わってよ』
ハデな巻髪、つけまの大きな目。
ギャルの代表とも言えるエリカがそう言いながらあたしに詰め寄った。
『え……』
ジリジリと間合いを縮めるエリカに、思わず後退り。
……なに、これ!
あたしには無縁と思っていたまるでマンガの世界がここにあった。