ダンデライオン~春、キミに恋をする~
ひぇーーーーっ!
恐すぎる。
“つけま”で大きくなった瞳が、真っ黒なアイラインさらに強調されてる。
もう、その目はまるで魔女。
ヒヤリと背中に何か当たる感覚がして振り向くと、そこには校舎の壁があってこれ以上逃げられないことを知る。
狙われてる……。
狩られる……。
『水やりを変われ』と言うエリカの言葉にコクリと首を縦に振りそうになったその時だった。
『――何してんの?』
聞き覚えのある声が、あたしの視界の向こう側から聞こえた。
背の低いあたしからその声の主は見えないけど、すぐにわかった。
『……な、成田……君』
エリカを含む、他の女子達も困ったようにお互いの顔を見合わせてる。
人並みをかきわせて姿を表した響は、ポケットに手を突っ込んで少しだけ首を傾げていた。
女子達の視線を一気に集めてる響。
でも、そんなの気にする素振りはなくて。
真っ直ぐにあたしの元へ来た響の影であたしの目の前が暗くなる。
『こんなとこにいたんだ、椎菜』
『……響』
なんだか泣きたくなった。
マンガや小説の中のお話みたいに、響が助けてくれた。
偶然なのかもしれないけど、嬉しかったんだ。
思わず涙目になってるあたしを見て、響はスッとその瞳を細めた。
『成田くん、間宮さんと付き合ってるってホント?嘘なんでしょ?』
そう言ったエリカの声が、さっきより高くなってる。
……なんなの、その鼻にかかる声。
で、でも。
悔しいけど、エリカはかわいい。
あたしなんか、比べちゃいけないくらい。