ダンデライオン~春、キミに恋をする~

響が転校してきた次の日。
泉先生と響が音楽室で何か話してるのを見たんだ。

なんで忘れてたのかな……。

あの時、なぜか見ちゃいけなかった気がして逃げちゃって……。
その後すぐ、響に『告白』されたんだ。

……あれって……告白……なんだよね?

ドクドクと体の奥の方で鳴る心臓。



だけど。

それから響が先生に目を向けることはなくて。
授業の終わりを告げるタイムが鳴っても
ずっと外を眺めてて。

そのまま出てってしまった。



「……」



あたしの思い過ごしかなぁ……。
気にしすぎなのかも。


響は普段、そんなに話したりしないし笑ったりもしない。
だから、水やりを一緒にしてる時の響は貴重だなって思う。


ぼんやりとそんな事を考えていたら、あっと言う間にHRも終わっていつの間にか教室にいる生徒もまばらになっていた。


沙耶やゆっこ達の姿も見当たらない。

そういえば、さっきバイトがあるからってHRが終わってすぐに3人とも帰っちゃったんだっけ。


……って、あたしの悪い癖。気になることがあると、トリップしちゃう。本当、ぼんやりしすぎ。

自分にツッコミながら、机にかけてあった鞄を掴むと教室を出た。


当たり前のように足は箱庭に向かう。

響がいると思ったけど、やっぱりそこには誰もいなかった。


あーあ。
なんか、付き合うって想像してたのと違う。

「はあ」と溜息をつきながら、ベンチに腰を落とした。

もっと、一緒に帰ったり、その途中でカフェに寄ったり。
映画みたり、手つないで公園でまったりデートしたり。


そして、別れ際……甘いキスをする。


なーんて、想像してたのに。




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