ダンデライオン~春、キミに恋をする~

5月。

緑のじゅうたんには、タンポポがその小さな花弁を広げてる。


「……」


タンポポを眺めながら思い出すのは、初めて響に出会ったあの日。


……まさか、あの響と付き合うことになるなんて思いもしなかったな。

なんて、そんな事を考えながらベンチから立ち上がった。


響、まだ来そうにないし……。
先に水やりしちゃお。

箱庭の水やりは、ジョウロからホースへ昇格していた。



サアアアア――……



花達は、美味しいご馳走をもらえてなんだか嬉しそうに見えた。

太陽の光を浴びて、七色に揺れる花。


でも、チューリップもパンジーもなんだか元気がなくて季節の移り変わりを感じてしまう。



ささやかな虹が架かる。

ぼんやりとそれを眺めていると、どこからともなくピアノの旋律が聴こえた。



部活動の生徒の声に混じって、それは耳に届いた。



……吹奏楽は、ピアノ……ないよね?



泉先生?




――ドクン



そう思った瞬間、心臓が鈍く反応して昼間の響の視線を思い出す。

先生を見つめる、射るような眼差し。





あれは……




「……うわッ!」

「……」



……え?



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