ダンデライオン~春、キミに恋をする~
いつまでそうしていたんだろう。
気がついたら空には、ビロードの空に色とりどりの星が瞬いている。
「……きれい」
涙の滲んだ視界から見えるその星空は、いつも見えてるものとは比べ物にならないくらい綺麗で。
住宅街の真ん中の小さな公園が、まるであたしには酸素の薄い山の頂に感じたんだ。
「……」
そろそろ帰ろう。
お母さんも心配してる。
そう自分に言い聞かせて、まるで鉛のように重たい体をなんとか起こした、その時だった。
あたし一人だった公園の中に人の気配を感じたのは。
「……いた……」
その声に、体が思わず飛び跳ねそうになる。
え……うそ、
な、なんで……。
夜の闇に溶けてしまいそうな、その儚い声。
低くて、透明な声色。
公園の入り口から届いたその声の主が、まっすぐにこっちにやってくる。
『ジャリ』って音をさせて。
ためらいがちに。
「…………」
どうしよう……。
“また”見てないフリする?
……大丈夫。
出来る。
何もなかったようにするんだ。
ほら、言って! あたし。
「……、響? こんなトコでどうしたの? 響の家、こっちじゃないでしょ?わぁ、すっごい偶然っ」
――正解、かな?
あたし、笑えてるよね?