ダンデライオン~春、キミに恋をする~


「……ッ……ぅ……、も、もういいから。
あたしのことはいいから……。早く行って……あの事は詮索したりしないし、みんなにバラしたりしないっ。だから……」



響の顔が見れない。
絶対に呆れてる。

それならそれで構わない。


だから、早くあたしの前からいなくなって。
これ以上、響を傷つけたくないよぉ。



「だから……っ」

「……椎菜、椎菜。 聞けって!」



その声に驚いて、あたしはハッとして顔を上げた。

いつの間にか、あたしの軟弱パンチは響に捕まってて。
見たこともないくらい、真剣な響の瞳がドキリと胸を焦がした。


「…………」


今日の空と一緒だ……。
瞳の中のビロードに吸い込まれちゃいそうになる。




「ちゃんと話すよ。……本当のこと」




痛いくらい握られたその両手から、じわじわと熱が伝わってそこから溶けちゃいそうだ。

響はそう言って、視線を落とすと、捕まえたままのあたしの両手にそっと自分の額を寄せた。


「……」

「だから。 頼むから……泣くなよ」



搾り出すようなその切ない響の声に、カッと頬が火照るのがわかった。




――こんな時に。

“握られた手が嬉しい”なんて。





…………あたしのバカ。






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