ダンデライオン~春、キミに恋をする~
その先には。
学ランに身を包んで不愉快そうに眉間にシワを寄せる1つ下の我が弟。
真っ黒な短い髪をワックスで遊ばせてるこいつには、姉を敬う気持ちってのが欠けている!
「……翔(カケル)。なにその言い方、お姉ちゃんに向かって」
「うっさい。 はよどけ」
……む。
頬を膨らませてみるものの、あたしは大人しく道を譲る。
そんなあたしを見て、ふふんと鼻で笑うとカケルはさっさと靴を脱いで2階に上がっていってしまった。
「なにあれ……」
「カケルも部活で疲れてんのよ。 それよりそろそろ七美達の勉強も終わるんじゃないかな……」
お母さんがその言葉を言い終わる前に、2階の七美の部屋のドアが開く音がした。
「あ! しーちゃんおかえりー」
「ただいま、七美」
真っ黒な髪をふわふわと揺らして、七美があたしに笑顔を向けた。
七美は、あたしとは似ても似つかないくらい美少女だったりして……。
どうしてこうも、姉妹違うかな。
……って、一時期すっごく悩んだでたかも。
「まあ、イツキ先生。 ありがとうございましたぁ。 そうだ、今日とっても美味しいケーキがあるの。よかったらどうぞ」
ワントーン上がる母の声。
その声に思わずジトーって目を細めながら、あたしはその『イツキ先生』に視線を移した。
「あ、いえ……そんなお気遣いなく」
―わ。
いい声。
ハスキーなんだけど、なんてゆーか。
耳にスッと入ってくる、透き通った声してる。
でも、あれ?
なんか聞き覚えあるよーな……。