ダンデライオン~春、キミに恋をする~
お風呂に入って自分の部屋に戻ったあたしは、締め切ったままの窓を開けて空を見上げた。
空には無数の星が輝いていて。
初夏の夜風が、まだ熱のこもった肌に心地よかった。
「……あ」
そこであたしは思い出したんだ。
――そうだ。
あの声……
あの声って響の声に似てるんだ。
響が時々歌う鼻歌。
その時の声に、樹先生の声がなんとなくリンクしてた。
だから、気になったんだ……。
無意識のうちに響を意識していたことに驚いて、そして頬が火照る。
「…………」
空から部屋の中に視線を落とした。
――ドキン
ピンクと白の小さなパック。
響にもらった……―――苺ミルク。
『……だけど、俺』
どこからか、響の声が聞こえてくる。
まるで目の前に響がいるみたいに、それはリアルに再生された。