ダンデライオン~春、キミに恋をする~


お風呂に入って自分の部屋に戻ったあたしは、締め切ったままの窓を開けて空を見上げた。
空には無数の星が輝いていて。
初夏の夜風が、まだ熱のこもった肌に心地よかった。




「……あ」



そこであたしは思い出したんだ。


――そうだ。


あの声……
あの声って響の声に似てるんだ。



響が時々歌う鼻歌。
その時の声に、樹先生の声がなんとなくリンクしてた。

だから、気になったんだ……。


無意識のうちに響を意識していたことに驚いて、そして頬が火照る。



「…………」



空から部屋の中に視線を落とした。


――ドキン


ピンクと白の小さなパック。
響にもらった……―――苺ミルク。




『……だけど、俺』




どこからか、響の声が聞こえてくる。

まるで目の前に響がいるみたいに、それはリアルに再生された。





< 92 / 364 >

この作品をシェア

pagetop