迷宮の魂
和也の頭の中で、危険だという意識がより鮮明になりだしていた。
明らかに空気が違う。
停車している車。
ちらりと見えた人影。
和也は目指すバス乗り場を大きく迂回するように、一旦、大通りの方へ出ようと踵を返した。
と、いきなりパァーンという爆竹を鳴らしたような音が響いた。
思わず身を屈めると、そここの辻から駆け出す男達の姿が目に入った。
和也は反射的に反対方向へ駆け出していた。
「逃げたぞ!」
「待てっ!」
背中越しに飛び交う怒声に混じり、
「……が撃たれた!」
という声が聞こえた。
何処をどう走ったのか、まるで憶えていない。
とにかく、気が付いた時にはタクシーを何台も乗り継ぎ、横浜に逃げていた。