空中少年(Gnawing at this heart)
二週間ほど前、ごく普通の平日だった。

制服を来て、授業を受けて、放送部のミーティングを終えて、下校。

変わり映えしない一日を終え、ローファーの踵を鳴らしながら校門をくぐったところで、忘れ物に気がついた。

面倒だったけれど取りに戻ろうと、回れ右をして昇降口へと歩き出す。



空を見上げたのは、夕日が綺麗だと気づいたから。

顔を上向けたのと同時に、赤い光を跳ね返すそれが目に入ったのは、全くの偶然だった。



あ、と思った次の瞬間には、かちゃん、と微かだけれど確かな音を立てて、それは着地した。

三歩ほど足を進めたくらいの距離だ。私の歩幅がもう少し広かったら、直撃していたかもしれない。



見ると、くすんだ銀色の鍵だった。

キーホルダーの類はなく、素っ気ないプラスチックのプレートがひとつついているだけ。

拾い上げると、水色のプレートには何も書かれていなかった。



確かに今、目の前に落ちてきた。

鳥の脚にでも引っかかっていたのでなければ、どこかから飛んできたと考えるのが適当だろう。

ぼんやり考えながら校舎を見上げると、屋上に人影があった、気がした。
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