空中少年(Gnawing at this heart)

理由(feel so lazy)

屋上へと開く扉の向こう、今日も小坂が寝転んでいた。


「空が綺麗ですね」


私に気づいた小坂は、芝居がかった調子で言い、そのままの体勢で人差し指を上に向けてみせる。


「アイラブユー?」

「はあ? 言ってない、言ってない」


わざと聞き返すと、ころころと声をあげて笑っていた。

これが中里だったら、照れたように目を背けるのだろうと思う。

過去の文豪がアイラブユーを「月が綺麗ですね」と和訳した、そんなことを小坂が知っているわけがない。



上体を起こした小坂の傍らに、購買のビニール袋とサンドイッチの空のパッケージ。

風で飛んでいかないように、わざわざ財布を載せているあたりが微笑ましい。

そしてその横に、紙パックのオレンジジュース。



正座を崩した形で隣に座り、弁当の包みを開ける私に、小坂は何気ない調子で言ってきた。


「中里と付き合ってんの?」


昨日ファーストフード店で目が合ったときの、小坂のニヤケ面を思い出す。



「付き合ってないよ」

「嘘つけ。優等生同士、勉強デート。俺には考えらんねえよ」

「ていうか中里、知ってるんだね。去年同じクラスだったとか?」
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