[短編]アスタラビスタ
「今日はありがとうね」
私の家が視界に入った所で涼に話しかけた。
「……」
「涼?」
涼は返事をしなかった。
代わりに立ち止まった。
「ハル!」
「涼?どうし…た…」
涼に強く抱きしめられた。
支えのなくなった涼の自転車が塀に倒れかかる音がした。
「ハル」
涼の腕がさらに強く私を包み込んで、少し息苦しいくらい。
「…涼?」
「ハル…行くなよ」
「えっ…」
「東京なんか行くなよ。ずっと俺のそばにいろよ」
「……」