[短編]アスタラビスタ
「ねーちゃん!」



和也は半泣きになりながら、私の体を揺すった。



「わ、わかった、病院に、行くから…」



事態を飲み込めていないが、体中が震えている。うまく言葉が出ない。



「和也、お前は残ってなさい。お父さんが送ってくるから」



騒ぎを聞きつけたお父さんが、車のキーを片手に部屋に来た。


「お父さん…」


「大丈夫、何かあれば電話するから。先に寝てなさい」



心配そうな和也にお父さんは優しく諭した。


私は言われるままに車に乗り込んだ。


着替えることなんて頭になかった。パジャマのままだ。

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