茅〜最期の10ヶ月
 
 
 
 
202号室
 
時計を
確かめると
6時37分
 
「そろそろ行こっかなぁ」 
 
 
205号室
 
「和美さーん♪」
 
「茅ちゃん!どうしたの?」
 
「息子さん、まだ来てないの?」
 
「今電話があってね、今日は亜以ちゃんの誕生日だからって・・・。」
和美さんは
今まで見たことも
無い程悲しそうな
顔をしていた。
 
「、、、。そうなんですか・・・じゃあ今日はあたしがずっと一緒に居てあげますよ♪」
 
「ありがとね、、。茅ちゃんは本当に優しいのね。」
予想していた通り
和美さんは
まだ悲しそうな
目をしていた、、、。
だから、とにかく
楽しい話を
いっぱいして
和美さんを
笑わせようと
していた。
 
「それでね、麻由美が・・・。」
いくら話をしても
いつもの和美さん
のように楽しそうに
笑ってくれなくて、、、。
 
「和美さん、、。そろそろ帰りますね。あたし邪魔だろうし、、、。」
病室から出ようと
した時…。
 
「ごめんね…。また来てね…。」
 
「…はい。」
 
その日、
あたしの頭から
和美さんの
あの悲しそうな
顔は消える事が
なかった、、、。
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