マビキ
「大人しくしてるか?ウジ虫共」。
看守はそう言った。
「何だと?ウジ虫って言ったのかこいつ」
手に汗握りながらその様子を見ていると、襲撃者の一人が駆け寄って来た。

男は錠に向かって発砲した。

すると錠は壊れ、手早く扉を開けると、俺達に逃げるよう促した。

聞きたい事もあったが、状況が状況だ。

ひとまず素直に逃げといた方が良さそうだ。

俺達はぞろぞろと牢屋から出た。

しかしそう簡単にはいかなかった。

看守達が脱走に気づき、こちらに狙いを付けた。

どっちみち『処分』する予定だった訳だから、躊躇せず撃ってきた。

俺は全力で走った。

最前列にいたのが幸いして、俺に弾が当たる事はなかった。

が、後ろの方で叫び声が響く。

脱出の希望が灯った直後の絶望。

数人の人間がバタバタと倒れるのが見えた。

俺は振り向いた事を後悔し、すぐまた前方を見て走った。

先頭を走っていたのだが、不良に抜かされた。

むかつく余裕がある事に驚きつつ、階段を一段飛ばしで駆け上った。

地下にいたから一階に出た訳だ。

もうちょっとだ、そう言い聞かせたその直後、銃を持った男と鉢合わせになった。
警官のような制服を着ていた。

襲撃者ではない。

「貴様、脱走者か!」
怒鳴りながら銃を向けてきた。

体温が一気に下がる。
やばい。

男が引き金に指をかけたその刹那、男の首に拳が直撃した。

不良だ。

不良が後ろから不意打ちを食らわしたのだ。

男は呻き声を出して倒れた。

不良は素早く拳銃を奪い取ると、黙って走りだした。

俺は慌ててありがとうと言ったが、それでも奴は無言だった。

走り続けた俺達は、ついに外へ出る事に成功した。

続いて脱走者が次々に出てきた。
年寄り達も何とか付いて来られたようだ。
「やった…」

俺が呟くと、不良がこちらを見た。

「まだ安心出来ねえだろ、こっからまた逃げるんだからな」

確かにそうだ。外に出たからといって安心していられない。

でもどこに逃げればいいんだ?

きょろきょろしていると、襲撃者の一人らしき男が来た。

< 15 / 15 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop