はつこい
こんなにも優しい声を出せるものなのかと、あの憎まれ口ばかり叩いて、声が高くてガキみたいなこいつから、どうしてこんなに優しくて低い声が出るのかと。


何故だか、気付くと泣いていた。



きっと私はこうして、誰かに優しく抱き締めてもらいたかっただけなのだ。幼い頃、母が出かけている間に雷が鳴りはじめた。早く、早く帰ってきてよ、お母さん、そう思ってた。夜になっても帰って来なかった。

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