はつこい
「真結ー?なんか食うもんある?」

台所のほうから声がした。ちょっとごめんね、と悠に寄り添ってた身体を動かす。正直遼が帰ってきてからその位置の居心地はあまり良くなかった。気持ちを知っているのにこんな行動はあまりに酷ではないかと。私なら耐えられない、と。

「えっと…一応ミートスパゲティあるけど…重たいよね?んー…」

「全然ミートスパゲティでいーよー。」

「ほんとに?麺あるから違う味もできるよ?」

「大丈夫。腹へってるから」

あっちで待ってると出ていく遼にちょっと待っててねーなんて声をかけてソースの入ったフライパンを火にかけて麺を茹でた。

そこにはいつもと違う香水の香りが漂っていた。
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